先週に出たananはお得意のインテリア特集だ。賑やかだけど中身が無いのは毎度の事・・と流せないのは昨今の地震その他の災害のせい。
今のご時世で見せる収納なんてありえない。”いかに被害を抑えるか”を考慮にいれないインテリア・コーディネーターの仕事は見る価値がない。
我が家でもオープン式のCDラックを買っていいことになったが、震度6強の地震で一斉にケースが飛び出しプラスチックの破片を床一杯に撒き散らすことを思うと、とても買う気にはなれなくなった。
今回のananでも取り上げられていた、ケースからCDと歌詞カードを取り出しファイリングしていう方式を、今までだったら笑って読み飛ばしていたが今は現実的に考えざるを得ない。
その時に悩むのがファイリング方法。PC内のデジタル・データだったら幾らでもソート出来るけど現物はそうはいかない。ABC順にするか・・そうすると新規購入した際に玉突き移動が大変だ。ではジャンル別にしたら?
ソウルかロックか、ジャズかソウルか、フレンチかヒップホップか・・新たなジャンル分けの悩みが発生してしまう。ちょうどペレケーノス「愚か者たちの誇り」のこんなシーンのように。
マーカス・クレイはレコード棚からジミ・ヘンドリックスを引き抜くと、ソウルのコーナーからロック・コーナーへ歩いていき、元来あるべき場所、つまりHの棚のハートとハンプル・パイのあいだにある雑多なアルバムのなかにさしこんで戻しておいた。あの華奢な体つきのラシードは--クレイは好んで彼のことをラシードXと呼んでいたが--いつだってヘンドリックスを店のソウル・セクションに入れてしまう。
~中略~
それに、なんてったってジミじゃないか?あいつはロックに決まってる。
「おい、ラシード!」
「はあ」ラシードは顔もあげず、カウンターのなかに立ってLPに価格シールを貼りながら、店に備え付けたKLMのスピーカーから大音響で流れてくるカーティス・メイフィールドの《バック・トゥ・ザ・ミュージック》に合わせて口をぱくつかせていた。いつも耳をつんざくようなボリュームで音楽をかける。それもラシードの困った点のひとつだ。だが、少なくともターンテーブルに載せているのはカーティスだった。こいつもまともなセンスだけはもちあわせている。
「ヘンドリックスをソウルのところに動かしちゃならんという話はもう二度と繰り返したくないんだ。いい加減疲れて・・」
「わかってますよ。ボス」返事はあったが、相変わらず顔はあげようとしない。
「ほんとにわかってるんだろうな、おい」
「そりゃあもう」
「頼むよ」クレイはそう言ってうしろを向きかけた。
ラシードが言った。「でも、《バンド・オブ・ジプシーズ》は聴いてないみたいですね」
ほら、これだ。クレイは目を閉じて、深呼吸をした。壁に貼られた〈ルーファサイズド〉のポスターを見つめ、チャカ・カーンに視線を這わせながら-まったくいい女だ-体の強ばりをほぐした。「聴いたよ。それがどうした?」
「バディ・マイルズがドラム叩いてるやつですよ?ジミは一歩進んで、まちがいなくまともなファンクを弾くようになった、《マシン・ガン》とかも全部そうだけど。それなのにソウルには入らないって言うんですか?彼が最後にはファンクを目指していたってわかってるのに-」
「お前は自分を何様だと思ってるんだ、心霊術師のクレスキンみたいなテレパシー野郎のつもりでいるのか? 死んだ人間がなにを目指していたか、おれに教えるつもりなのかね? よく聞けよ、やつは最後までロックを貫いて死んだんだ、だからこの店じゃそのジャンルに入れるのさ。わかったか?」
「承知いたしました、ボス」ラシードはわざとらしく白人の発音を真似た。「ご無理ごもっともなことで」
ここから先般書き記したP-FUNKの場面に繋がっていくのだが、このジミのエピソードは後に美しい結実を迎える。今まで触れた書評は見たことがないけれど、とても読み飛ばすわけには行かないだろう。