有楽町の紀伊国屋書店、文庫本コーナーでなんと志水辰夫の「行きずりの街」が第一位!ということで平積み大展開されてました。
「このミステリーがすごい!」の1991年度で1位を取った作品なので実に16年前の作品になりますが、20刷り近くを重ね、なおもこのような舞台に立つ。実は古本屋で220円で買ったまま手をつけていなかったので、これを期に読んで見ました。(アマゾンなら1円からあります)
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行きずりの街
ある事件によって愛する妻と引き裂かれ、また追われるように東京を去っていった主人公が、12年の歳月を経て教え子を探しに東京に舞い戻る。行方をくらました教え子の足跡を辿る内にかつての事件と直面し・・・(以下略)
というお話しは、無理を承知で言えば村上春樹の
ダンス・ダンス・ダンス〈上〉(アマゾン)のようだが、最後に「ユミヨシさん、朝だよ」なんて言える余裕はもちろんシミタツの主人公にはない。また他のシミタツ作品で感じられる芳醇な自然の香りもない。そこにあるのは90年前後のバブル期の都心(全く古びていない描写)の濃厚な空気感、あるいは閉塞感。そして船戸作品を想起させる暴力の力感と結末に向けてのやや強引なプロット。
だがそんな違和感を補って余りあるシミタツ節がそこにある。主人公が愛する者に向ける眼差しと真摯さと、それを主人公が表現することが出来ないもどかしさが、いつものごとく大いなる流れとして作品を貫いている。
作品後半のプロットについては、高村薫氏なら大幅改稿してしまうだろう、村上春樹氏なら全く別の作品に仕立て直すかもしれない。そんな諸さを持ちつつも一筆書きのように書かれているのは、やはりシミタツ作品ならではで、北上次郎氏が入れ込む(
背いて故郷とならんで氏の中で1位とのこと)ほどではないにしても、繰り返して読みたくなる素晴らしい作品であった。
電車通勤の車中での読書の際、BGMとして一番嵌っていたのがCCRの
The Concert。畳み掛けるような描写とジョン・フォガティのボーカルがベストマッチでした。
一回目の読書はページを飛ばすように繰っていったので、昨晩はベッドに持ち込み
オールドブッシュミルズを舐めながら。1時を回ると掛け布団の上をどすんどすんと飛び跳ねていた凛と魁もおとなしく丸まり、ようやく静寂が訪れました。ここでまたまた登場する上原ひろみの
スパイラル(通常盤)。最新作の
タイム・コントロールも大傑作ですが夜に聴くにはあの変態ギターは外したい(笑)
※上原ひろみの4作品は、HMVで輸入版で1枚1890円、2枚なら1枚につき1590円で購入出来ます。かならず試聴盤が出てますから聴いてみて下さい。そのままレジに直行間違いなしです。